綿井 健陽 Web Journal/03.04.13

3月11日にバグダッドに入って以来、ちょうど1ヶ月が過ぎた。
フセイン政権の崩壊、米軍のバグダッド制圧を間近で目撃してからの数日間は、
かつてない疲労と脱力感に襲われている。 しかし、それにしても日本の報道では早くも、
「戦争終結へ」「復興」「次の標的はシリアか?」などというニュースが結構出ているようだ。 
だが、ちょっと待ってくれ。
まだこの戦争、いや何度も繰り返すが「殺戮」は終わっていないぞ。
「終わり」も「勝者」も存在しない。  ほんの1ヶ月ほど前までは、日本も世界も、アメリカの
イラク攻撃に対して、さまざまな形や表現で反対していたはずだ。

ならば私は、フセインの銅像を倒して喜ぶ人たちよりも、今こそ伝えなければならない人たちが、
ここバグダッドにいることを強調しておきたい。
・・・・・「目が痛くて、眠れない。頭も痛い」と訴える彼女は、これからそのガラス片を取り除く
手術を受けることになる。

「アメリカの兵士にこの目を見せて、何が起きたか全部説明してあげる。片目では何もできない。
この目を元通りにしてほしい。私は絶対に許さない」

表情は終始笑顔だった彼女だったが、彼女の左目は決して笑わない。包帯の下の右目の奥底には、
何が宿っているのだろうか。彼女の目の中に残る数ミリのガラス片。

私は、はっきりと確信した。

フセインの銅像を叩いて喜ぶ人たちの様子や声よりも、「無差別殺傷兵器」がもたらした、
この数ミリのガラス片、白い点を伝えるために、私はバグダッドにこれまで留まったのだ。
空爆は、爆弾そのものが炸裂して死傷させるとは限らない。
空爆は、落ちた1つの爆弾の被害だけでは終わらない。
空爆は、音の恐怖で人間の神経を締め上げる。
「空爆される側」で取材を続けて1ヶ月。
「精密誘導」でも、「トマホーク」でも、「誤爆」でも、
「殺される側」にとっては、そんな区別は一切関係がない。
空爆そのものが「無差別殺傷兵器」だった。
そしてもう一人、ただ彼の叫びに耳をすましてほしい。
ハディールちゃんも合わせて、いつか映像でも報告できると思うが、
いまは字面だけで想像してほしい。
これは決して「インタビュー」などではない。

アベド・アルカリムさん(23歳)。4月5日、同じくドーラ地区の空爆で右足を負傷した。
4月11日、バグダッド市内のサウラ病院の病室で、足の切断手術をした直後、私は彼に会った。
そのとき彼がずっと天を仰ぎながら、ときに泣きながら、叫んでいた言葉。
私は黙って、ただずっと聞いていた。
「俺の足、お父さん、お母さん」
「足が無くなった。俺の足、俺の足」
「アメリカ、俺に近寄るな」
「アメリカ、アメリカ、殺すだけ。俺が何をした」
「足を返してくれ。俺の足。俺の足」
「もう、俺の足は見ることはできない」
「痛くて死にそうだ。俺は人間だ」       


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