ベルギーの医療支援団体「第三世界の医療支援」は、バグダッドに4名の医
師を派遣し、医療支援を続けています。(4名は延べ人数で、常時は2名が常駐)

 このNGOによる緊急声明が4月16日付で発表されました。

 発表後に米国の反戦団体など、いくつものNGOのサイトに公表され、また、
戦争反対の活動を続けているさまざまなメーリングリストなどに紹介されました。

 「第三世界の医療支援」は、ベルギーのブリュッセルに本拠を置くNGOで、
これまでアフリカ、フィリピンなどでの支援活動があります。今回は3月中旬
に「S.O.Sイラク・ベルギー」というNGOの協力で、医療支援活動を行
うためバグダッド入りしましたが、現地の状況をほぼ毎日インターネット上に
公表してきました。
http://www.irak.be/ned/missies/medicalMissionColetteGeert/two_belgian_doctors_in_baghdad.htm
は、イラクからの報告を英文とビデオで紹介しているページです。
 この英文のサイトは「S.O.Sイラク・ベルギー」のものです。
 なお、「第三世界の医療支援」の公式サイトはhttp://www.m3m.be/です。

                    (山崎久隆/TUP翻訳メンバー)

出典URL 
http://www.irak.be/ned/missies/medicalMissionColetteGeert/report_16_04_2003.htm
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ベルギーのNGO「第三世界の医療支援」による緊急声明と請願
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占領軍にはイラクの重大な人道危機について責任がある

バグダッド2003年4月16日

 私たちは医者として、合衆国と英国の爆撃、侵略と占領によって引き起こさ
れた大規模なイラク住民への被害に直面し、沈黙することはできない。

 私たちは、クラスター爆弾のような禁止された兵器によって殺され、負傷し
た多くの子供たちを含む何百という市民を見た。我々は救急車や民間の自動車
が、いかにして合衆国部隊によって襲撃されたか見た。我々は患者と医療労働
者が、合衆国軍のチェックポイントを通過し、医療施設に着くのにどれほど手
こずったかを経験した。

 私たちは今、イラクの民間病院やその他の医療施設がいかにして略奪され、
そして放置されているかを見ている。多くのイラクの医療専門家が、もはや仕
事のために出勤することさえできない。電気、安全な水、薬や他の医療品の準
備も底をつき、多くの患者がただ死んでいく。
 医療専門家として、そして人間として、私たちはこの状態に耐えることがで
きない。

従って私たちは次の声明を公表し、訴える:

1.現在の人道上の大惨事は、国際法の完全な違反によりイラクに対する侵略
戦争を始動した合衆国と英国に全責任がある。(訳注1)

2.この戦争において、合衆国と英国の部隊ははなはだしく、そして繰り返し
て国際人道法(ジュネーブ条約第一追加議定書の条項10、12、15、21、
35、36、41、45、47、48、51)に違反した。(訳注2)

3.人道上の大惨事に関する真の、そして永続的な解決は、すべての合衆国と
英国の占領部隊がイラクから即刻、無条件に撤退し、イラク全領域にわたるイ
ラクの主権の完全な復活の後に、イラクの人々による自由意志をもって実現さ
れる。

4.合衆国と英国は、すべての直接的、及び間接的な戦争被害による損害に関
し、イラク人とイラクと社会に賠償するべきである。

5.その間、権力を持つものとして、合衆国と英国は住民の食糧と医療品を保
証する義務(ジュネーブ第四条約 第55条)を負っている。同様に、占領地
で被占領国や地元の当局の協力のもとに、医療、病院事業、公共サービス、公
衆衛生と保健衛生を保証し、維持する義務を負っている。医師が任務を遂行で
きるように考慮しなければならない。(ジュネーブ第四条約第56条)(訳注3)

6.私たちは、国連環境計画、ユニセフや世界保健機構のような、適切な国連
機関に対し、イラクで直ちに人道活動を再開することを求める。家が完全に全
焼するまで、消防士は待たない。火事と戦い、建物の完全な崩壊を防ぐために
危険に立ち向かうのである。

7.私たちは、イラクの住民による、合衆国と英国の占領を非難し、合衆国と
英国の当局が国際人道法の下で任務を果たすことを要求するすべての自然発生
的な、そして組織的な行動を支援する。

8.私たちは、国際人道法違反に対する責任を追求するために、法廷の場に合
衆国大将トミー・フランクス、他のアメリカ合衆国と英国の軍当局および関係者を
引き出すことを目指す行動を支援する。国際人道法に対する合衆国と英国による
違反の直接の犠牲者、とりわけ患者と医療関係者の要請に基づき、私たちは、
有名なベルギー人権弁護士、ジャン・フェルモン氏に、ベルギーの法廷で戦争犯罪
に関してアメリカ合衆国大将トミー・フランクスを訴追することが可能であるかどうかを、
ベルギー法に基づき普遍的な適格性を調査するように依頼したところである。


ヘールト・ヴァン・ムーター 医師 緊急医療
 バグダッドに3月16日から滞在

コレット・ムーラート 医師 小児科医
 バグダッドに3月16日から4月13日まで滞在

 ハリド・ダイウィット 医師
 バグダッドに4月6日から4月13日まで滞在

 クレア・ゲラーツ 医師
 バグダッドに4月6日から滞在

 バート・デ・ベルダー 医師 
 ベルギー/ブリュッセル 「第三世界のための医療支援」コーディネーター


訳注

(1)「国際人道法」とは、
 武力紛争(戦争)において、負傷したり病気になった兵士、捕虜、そして武
器を持たない一般市民の人道的な取り扱いを定めた国際法の総称。国際法は、
条約と慣習法からなりたっているが「国際人道法」という名称の条約は存在せ
ず、「1949年のジュネーブ四条約」と「1977年の追加議定書」を中心とした、
様々な条約と慣習法の総称が「国際人道法」。
 「国際人道法」は、古くは「戦争法」、そして第二次世界大戦後は「武力紛
争法」という名称でより一般的に知られていた。現在、「国際人道法」という
名称は特に赤十字が、「戦争法」および「武力紛争法」は軍事組織が主に使用
しているが、内容に違いはない。(日本赤十字社のホームページより引用)
 なお、広く知りたい場合は日本赤十字社の以下のサイトが良い。
http://www.jrc.or.jp/about/sekijuji/b.html

(2)ジュネーブ条約第一追加議定書
 国際武装紛争の犠牲者の保護に関するジュネーブ条約 第一追加議定書

第10条 傷病者の保護義務規定
第12条 軍民問わず、衛生部隊の保護義務、攻撃禁止規定
第15条 民間の衛生要員及び宗教要員の援助と保護義務規定
第21条 衛生車両の保護義務規定
第35条 過度の傷害又は無用の苦痛、環境破壊兵器の禁止規定
第36条 新兵器が条約や国際法に違反しないとの説明義務規定
第41条 現に戦闘を行っていない敵の保護義務規定
第45条 敵対行為に参加する者の保護義務規定
第47条 傭兵に関する規定
第48条 文民保護基本原則
第51条 文民保護規定

(3)ジュネーブ第四条約
戦時における文民の保護に関する1949年8月12日のジュネーブ条約

第55条 食糧:占領国は、住民の食糧及び医薬材料を確保する責任を有する。
徴発した物件には公正な料金を支払わなければならない

第56条 保健及び公衆衛生:国及び現地当局の協力の下に占領国が確保し、
維持しなければならない

           (翻訳 山崎久隆/TUP翻訳メンバー)

イラク戦争の米英連合軍総司令官であるフランクス陸軍大将が、ベルギーの医

団によって戦争犯罪者として訴訟に訴えられる可能性があるという記事。すでに
四人の医師団の声明そのものについてはTUP速報(第71号)にて配信済み。

この記事はもともとExpatica.comという、ベルギーを出て外国、特に米国へ移住
した人々のためにベルギー情報を伝えるインターネットサイトに紹介されていた
もの。さらに、Truthout.orgなどイラク戦争の動向を伝える他の各種サイトにも
転載されています。記事自体は連合軍のイラク占領・駐留のあり方に対するかなり
批判的な立場を伝えています。 

(和氣久明/TUP翻訳メンバー)

元URLは以下:
http://www.expatica.com/belgium.asp?pad=88,89,&item_id=30621
http://www.truthout.org/docs_03/042603A.shtml

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フランクス司令官、ベルギーで戦争犯罪者として起訴の可能性
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ブリュッセル発:四人のベルギー医師団が、イラク戦争を指揮した連合軍総司令
官であるトミー・フランクス大将と、氏名が公表されていないもう一人の高官を、
戦争犯罪者として裁判に訴える見込みだ。この訴訟はベルギーの「修正ジェノ
サイド法」に基づいて行われる。

この四人の医師団のうち二人はいまだバグダッドにとどまり、ベルギーの医療関係
者のNGOである「第三世界の医療支援」のメンバーとして医療に携わりながら、
連合軍の非道ぶりをみずから眼のあたりにしてきた。

例えばこの医師団の顧問弁護士(ジャン・フェルモン)は、医師たちが目撃した
ものとして、救急車への発砲、市場への爆撃、市民が乗るバスへの攻撃、病院への
略奪行為に対する場当たり的な処刑、ないし意図的な見逃しなどを報告している。

今回の訴訟は、ベルギーにおいて大量殺戮、戦争犯罪、人権違反などの各種の立件
に対して過去普遍的な効力を持ってきた法律である「ジェノサイド法」の有効性が、
先月の外交努力の失敗・開戦以来試される初の機会となる見込みだ。

「ジェノサイド法」自体は現在いくつかの条項の修正を経ており、結果としてかなり
政治的なニュアンスが薄れているが、今回の訴訟に関しては医師たちは、イラクの
医師を擁護する立場から訴訟をすることを考えているために、効力は失われていない
と見られる。

もっともベルギー政府とベルギーの最高裁がこの訴えをどのように受け取るかに
よって、今後の訴訟の進展の具合が変わってくると見られている。

米国のパウエル国務長官は、ベルギー司法当局による、ディック・チェイニー現
副大統領と当時の大統領であった父ブッシュを湾岸戦争時にさかのぼる訴訟での
被疑者リストへの掲載以降、ベルギーの動きを「深刻な問題」と受け止めている。

フランクス陸軍大将は現在バグダッドのサダム・フセインが居所としていた宮殿に
滞在中で、これがまたイラク戦争の終結のあり方を象徴的に示している。

(抄訳 和氣久明/TUP翻訳メンバー)
元URLは以下:
http://www.expatica.com/belgium.asp?pad=88,89,&item_id=30621
http://www.truthout.org/docs_03/042603A.shtml


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