サラリーマンの怪談・奇談/壱 「おいてけぇ…」
そこにいたのは家族全員のっぺらぼう…ではなくて、彼の帰宅を 翌朝、彼はまた機嫌良く、出社すべく家を出た。 箱の中には子猫が2匹。 段ボール箱が雨に濡れてしまっていたなら子猫たちはこの寒さ、 |
サラリーマンの怪談・奇談/弐「ふるやのもり」 終わり |
サラリーマンの怪談・奇談/参「きつねにょうぼう」 ある会社員がいた。気の優しい、出世欲などほとんどないような、 おっとりした若い男で、北海道などを一人旅するのが趣味だった。 いつも物静かで自分から発言することなどあまりなく、 いるのかいないのかわからない、などとよく悪口をたたかれたりしたが、 彼はあまり気にもとめなかった。 おそらく自分という物をしっかり持っていて、マイペースを保つことを よしとしたからであろう。 ある夏彼は北海道に行った。 その旅の途中で彼はけがをしたキタキツネを助けた。 別段特に良いことをしたい、と思ったわけではないが、とにかく そのけがをした狐が倒れているのを見て、助けずにはおれなかった のである。彼がリュックサックを背負ってののんびりした個人旅行で、 そのリュックサックの中に応急手当の道具が入っていたのが 良かったのである。 彼はキタキツネを助けて2,3日もするとすっかり狐のことなど 忘れて、旅に夢中になった。北海道はいつ来ても良いなあ…。 彼はしみじみ思った。 それからしばらくして彼にとってはとても朗報だったのだが、 異動で北海道に転勤になった。それからしばらくして住んでいる アパートの隣の部屋に若くてとても美しい女性が引っ越してきて、 妙なことから知り合いになり、やがておきまりのように、恋へと 発展していった。やがて彼はその女性に求婚し、受け入れられ、 二人で(二人とも天涯孤独の身だったので)結婚式を挙げた。 まもなく二人の間には赤ん坊ができた。とてもかわいらしい かわいらしい赤ん坊で、二人で協力しあって、それはそれは かわいがったのである。彼は妻のことも子供のことも大変愛し、 とても大事にした。妻も彼のことも子供のことも大変大事に してくれた。 とても幸せな時が流れた。 ある日会社で仕事をしているとき、彼の元に妻から電話が入った。 「子供が高い熱を出しているので今から大きな病院に連れて行く。 遅くなるかもしれない」と言う連絡だった。 彼は非常に心配しながら帰宅したが妻も子も帰宅していなかった。 病院に行ってみたがそう言う親子は来ていないと言われた。 また別の病院を当たってみたがどこにも自分の大事な妻子は いなかった。気が狂いそうになるくらい、愛する家族を思って あちこち探してみたが、どこにいるのか、どこに行ってしまったのか、 全く見つからなかった。 彼は憔悴しきって、病気のようになってしまった。会社に行っても うつろで何も頭に入らないので、しかられてばかりいた。 そんなある日彼は地元の新聞をふと手に取った。いつもなら読みも しない、会社でとっている新聞である。彼はある記事が目に付いた。 「キタキツネ哀し」 読んでみると数ヶ月前地元のある人が不思議な光景を目にしたという。 彼女の前を歩いていた、幼な子をだいた女性が車にはねられたと言う。 女性はたいそう急いでいて、わき目もふらずに歩いていて、 車が前から飛び出してくるのに気がつかなかったらしい。 目撃した人があ!っと叫んで目を閉じてしまい、また開けたところ、 なんということであろうか、幼な子を大事に守るようにして 丸くなっているキタキツネが傍に横たわっていたという。 キタキツネは死んで、幼な子は病気だったので、病院で手当を 受けて治った後、乳児院に引き取られたという。目撃した人は 涙ながらにその不思議な出来事を語ったという。 …そんな記事だった。 彼は読みながら突っ伏して大声を張り上げて泣いた。泣いて泣いて 人目もはばからず、泣いた。目がとけて無くなるのではないかと 思うくらい泣いた。悲しくて、悲しくて、妻に会いたくて…。 彼は新聞社に電話を掛けた。あまり本気で相手にされなかったが、 乳児院のあり場所は教えられたので子供を引き取りに行った。 その後警察に行ったりあちこち走り回ったが死んだキタキツネが どうなったか覚えている人はいなかった。またひょんな事から 行方がわかるかもしれないと、彼はあきらめはしなかった。 それから会社を辞めて、もう少しだけ北の方に子供と一緒に 移り住んで、小さな運送会社の配達員の仕事をしながら、 質素ではあるが、子供を慈しみ、愛情を注いで、妻の忘れ形見として 大事に大事に育てた。二人で静かにひっそりと暮らしたという。 終わり。 |
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