のりこの日記/エキセントリックな放課後

あたしは昨日ユカの家に行った。泊まりに来て、なんて言われたんだけど、
ちょっとね。食事当番だから、なんて言って断っちゃった。
ユカってそれほどすごく仲のいい友達って言う訳じゃないんだけど、なんかね。
よく頼りにしてくるんだよね。幼稚園の時からの腐れ縁てのか、この10年ほど
ほとんど同じクラス。嫌になっちゃう。

それはそれで運命ってやつ?しょうがないと思うんだけど、なんかね、
合わない…彼女はそうは思ってないみたいだけど…。
どっちも母子家庭で母親が働いている、その辺は一緒なのになぜこうも
違う?っていいたくなるんだよね。
なんか弱々しいというか、お嬢というのか。
いつもメソメソして人に依存している、でもそれでいて人の話はあんまり
聞かない、みたいな。
いつも誰かを当てにして、でも誰のことも助けない。困っていても知らん顔。
だから誰もね、そういうやつは相手にしないよね?なあんて。

彼女に対するあたしの見方って、あたしが冷たくて意地悪なだけかもしれない
けれどね。
だって、同じ母子家庭って言ったって、あっちのお母さんはもうなんて言うのか
“お母様”ってかんじの、お偉いさん。
「教育研究家」とか言ってあちこちマスコミに出まくっている超有名人。
いつも灰色のきちきちしたスーツを着て、めがねを掛けて、難しいことを
もっともらしく言っているいかにも頭のいいすごい人。
かたやちっちゃな保育園の給食のおばさん。だからやっかみなのかもね。


とはいえやっぱり、受け付けないんだから相性が悪いんだろうなあ…。
でもなんかユカはあたしにいろんな事を、そのときに悩んでることを、
打ち明けたがるんだよねぇ。はぁ…。我慢ってものができないのかね?
しょっちゅうしょっちゅういろんな事をくよくよ悩んじゃって、
アドバイスしても別に受け入れる訳じゃないし、なんかね、つまんないやつ。


でもなんだかんだ、嫌な役を引き受けてしまうあたしってなんだろう。
もしかしてキュウキョクのお人好し? う〜ん。困ったね
。→今日のあたしの日記はなんかおばさんぽい。
やだやだ。ユカのせいだよ!

で、ユカの家に、放課後行って来た。実はね、ユカの家、久しぶりだったんだ。
最近は「お悩みごとうち明けデー」って、割とマックに行ったり、コンビニ
(この辺でただ一軒の!)でジュースを買って、どこかの公園で話したりして、
それで終わりって感じだったんだけど、今度はどうしても来て、て言うから
行って来たのよね。なんかね、誰かのうちで、深刻な話って嫌なんだけどね、
頼まれて断れない、って例のやつで。はあ〜〜。

その彼女の部屋がすごかったんだ。なんなんだあれは一体。…なんかね、
キティちゃんがいっぱいなの!!ピンク尽くめで。カーテンとかべっドの
ファブリック系、ピンクとフリフリがいっぱい! 学習机もいすも
ムートンの座布団もスリッパも、オーディオも、なんかみんなピンクの
キティちゃん。
あー…びっくりしたぁ。

目が点になっちゃったよ。でさ、彼女の言うには、

「あ、これママの趣味なのよねえ。あたしの部屋の趣味はね、ちょっと
違うんだけどね。
なんかママは『最近の女の子の好きな部屋はこういうのに決まっている!!』
って言う強いこみがあるの。なんでなんだろうね。いつも偉い偉いって
持ち上げられてるからかな。なんかね、女の子はこうあるべし!ってのを
すっごく押しつけてくるの」

そうかあ。それが悩みだったんだ、最新の。あたしはコクコクとうなずきながら
聞いていた。

「女の子の好きな服ってこう!っておもったらね、あたしの好き嫌いなんて
全然聞かないで、勝手にピンクハウスの服とか買ってくるの。
たぶんスタイリストさんに買ってきてもらってるみたいなんだけどね。
だって選び方が『どうでもいい』ってかんじなの。ね、こういうの着たら
似合うかな?こういうの買って帰ったら、びっくりするかな?喜ぶかな?
みたいな気持ちは全然こもってないの。適当に頼まれたから買ってきましたって
かんじ。スタイリストさんだから、無難にコーディネイトできるんだけど、
でもね、あたしはそこには不在なの」

あたしもそこで不在だったんだけど。単なる聞き耳ずきん。

あたしなんてそんなブランド、買ってもらったことない。自分でなんとかして
ゲットするか作るか。いーじゃん、買ってもらえるだけ。なんて意地悪く
思っちゃった。

「そんなとき、あたしはママ言うところ、能なしだけど、ハンサムだったとか
言うパパに会ってみたいって思うのよ。パパって一体どこにいるのかしら?」

そんなこと知るかい。

「ママってね、教育研究家のくせにね、不倫してるのよ。嫌だわあたし。
ママのこと最近信じられないの」

おおお!! なんか聞いてはならないことを聞かされているよな。
いいのか?ユカ、そんなこと言って。

「でもさ、まじめな顔してお堅いカッコしてテレビに出てるのよね。
たくさんの人を裏切ってるのよ」

ううう。今頃そんなことで裏切られたなんて思う人いるかな。
格好のワイドショー&週刊誌ネタにはなるだろうけど、誰もどうでも良いって
思うと思う。気にしないで、ユカ。でもユカだけは自分の理想のお母さん像が
こわされちゃうんだよね。

ユカは必死に理想の子供像を演じているのに、すでにお母さんはユカを
裏切っているわけだね。かわいそうに。あたしはしらけた気分で聞いていた。
所詮ハイソな悩みだよね。

「ママね、あれだけお堅いカッコしてるくせにね・・・」

まだあるのか、なにか??

「真っ赤なペデュキアをつけてるの」

!!

「黒い下着と」

!!

「ああ、もういや!!」

あたしはまっ赤なペデュキアと黒い下着とどぎついピンクだらけの部屋と、
びらびらのピンクハウスのかさばる服・・・そう言うのになぜだかクラクラ
してきちゃった。

そしてあたしは帰る道々忙しい仕事の合間合間にきっつい香水をつけて
色っぽいお仕事をなさっているユカのお母さんの事を思って、なんだか
ぞっとしてきた。

家に帰るとあたしの母が「合挽ミンチと餃子の皮ちゃんと買ってきた?!
朝言ったやつ!!」とあたしをにらみながら待っていた。

「あ、忘れてた・・・」

あんまり放課後がエキセントリックだったのですっかり忘れてた。


おしまい

 

 





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