のりこのクリエイティブな日記

 

あたしの母はかなり変わっていると思う。あたしに対する接し方、なんか他の友達から
聞いている母親像とはかなりかけ離れているような気がする。
第一、絶対あたしの言うことなんて聞いてくれない。勉強しろ、とか塾に行け、とかも
言わないので、あたしも好きな科目以外は、目も当てられないほどの「こんな成績で
いったいどこに進学する?」と言うくらい、ひどいものなんだけど、そういうことには
何にも言わないんだよね。
でもって普通、母親ってのは、娘がそろそろ色気付いてきて、いろいろしたいこと、
おしゃれとか化粧とか、が出てくると、応援してくれるよね?
服とか化粧品とか買ってくれてさ。


でもうちの母親は違う。何にも買ってくれない。ていうか、流行の服やなんかは
絶対買ってくれない。
化粧品もケータイももってのほか。ルーズソックスもだめ。

別にうちの母がお堅いってわけじゃないんだよ。ただ流行を追っかけるのが嫌い。
普通のことをするのが嫌い。ひねくれてるんだよね。物心付いたときからそうだった。
周りがいっぱいおもちゃを買ってもらってそれで遊んでるのに、あたしがねだっても
「いらないよ、そんなの。すぐ飽きるよ。後半年もすればそんなのでだれも遊んでない。
それより、外で遊んで来な。子供は外で遊ぶもんだよ」
なんて言っちゃって、今までに一回も買ってくれたことがない。
父親でもいれば「まあいいじゃん。買ってやれば」なんて言ってくれるのかも
しれないけれど、うちは母子家庭だからね。


一回風邪を引いて熱を出して寝込んじゃったときに、あたしがソロ〜っとおねだりを
してみたことがある。
こういうときにねだってみれば、同情を引いて買ってもらえるかもしれないと思ったの。
「ねえ、みんなリカちゃん持ってるんだけど、あたしも欲しいなあ・・・」


母は「そうだねえ」なんてつぶやいて、黙ってしまった。「これはもしかして?!」なんて
期待したんだけど、寝て起きたときに枕元に置いてあったのは手縫いのお人形だった。
家にあるいろんな古布を利用して作った、これまた可愛らしい、ちっちゃなリカちゃんと
同じくらいの大きさの人形で、あんまり可愛いから、あたしはあきらめた。
普通の子供なら「いらない!こんなの。あたしはリカちゃんが欲しいって言ったのよ!」
なんて言うところかもしれないけれど、あたしの母はそういう駄々が通用しない人なので、
子供心にも「こりゃだめだ」と観念してしまったような気がする。


母は器用だ。その可愛らしい、リカちゃんよりも可愛らしい人形に合わせて、そのうち
暇を見つけて、お友達を作ってくれたり、双子の赤ちゃんを作ってくれたり、がっちりした箱を
使って家を作ってくれたりした。それらはあたしの友達の大人気を集めたものだ。
家の飾りはみんなで折り紙を切り抜いて貼ったり、あたしもちっちゃなお菓子の箱で、
自分でテレビを作ってみたりして、なにかと楽しかった思い出がある。


母は同じ町内にある保育園で給食のおばさんをして働いているのだが、そこは小規模な
保育園で、幼児の着替えだの、昼寝をさせる手伝いだの、何かと用事を頼まれるらしい。
そんなこんなで、働いている期間も長く、保母さん達よりもいろいろ知っているから、発言力もある。
最近は自分の育児観を結構みんなに押しつけているらしい。保育園からテレビを駆逐しただの、
手作りの時間を増やした、だの、威張って帰ってくる。

こういう筋金入りの母の娘だからか、あたしもなんだか最近、手に入れられないものは自分で
作ろう!という、かっこよく言えばクリエイティブ精神に満ちあふれるようになってきた。

あたしはルーズソックスが欲しかった。でも絶対買ってくれっこない。バイトもしちゃいけないことに
なってるから、どうしても欲しいのに、ゲットできなくてだんだん欲求不満がたまってきた。

あたしが近くのスーパーにふらっと入って中を見てたとき、変なものを見つけた。
ハイソックスのワゴンセールなんだけど、これがまた変なのばっかり。
グレイッシュなピンクの地に黄色いバナナと、パイナップルがいっぱい飛んでるのや、
黄土色の地に、青いハイビスカスなのか、ツバキなのかわからないような変な花柄のとか、
白地にミドリガメがいっぱいはりついてるのとか、ぼこぼこしたデザインのとか、
「何これ?誰が買うの?」みたいな変なデザインのばかり、一足100円で売ってるんだよね。

でもあたしはふと思いついて、これを適当に選んで、財布のお金の中身分、めいっぱい
買い込んだ。

家に帰るとさっそくあたしは袋の中身をあけて、テキトーに選んで、きれいに4等分に切って
ミシンで縫い始めた。さらに細い子供のパンツとかに使うような細い平ゴムを適当に斜めに、
縦に、横に縫いつけて仕上げた。
3足分使って、こんな変なルーズソックス見たことがない!ってな超馬鹿みたいなルーズソックスを
作り上げた。
縫いつけたゴムのせいで、垂れ下がり具合はすごく変。我ながら芸術作品ができたなあ・・・。
あたしも器用で良かった。元々のデザインがすごく変なので、極めてる。
これならイケるかもしれない。

明日学校に行くのが楽しみ!と言うわけで、あたしはその日はうきうきしながら寝た。




「あたしはがっこにそのふざけたルーズをはいていった・・・。」

次の日あたしは意気揚々、そのルーズソックスをはいていった。
こういうあほみたいなかっこするときは背中を曲げて、自信なさそうなカッコしてると必ず後ろ指差される。
めちゃくちゃ自信たっぷりに堂々としてないとだめ、と昔々その昔、ヘビメタねーちゃんをしてた、
近所のちび二人連れたママさんに言われたことがある。

「若い頃ならできたのよ!超イケイケの黒ずくめのカッコがね。
もう年だからさ、はずかしくなっちゃったんだよ」とかなんとか言いながら、結構いまだに引きずってる
ママさんだったりするのがおかしい。

と言うわけであたしはそのめちゃくちゃあほみたいに変なルーズをはくのに、結構気合いを
いれていった。

「うげっ。何だよ、そのルーズ。朝から目がつぶれるんじゃないかと思ったよ」

そう声を掛けてきたのは一番仲の良いミリ。「いいじゃん。イケテルでしょ?
一緒にはこうよ、ミリ」と
あたしがにやにやしながら言うと、ミリはひるんだように言った。

「じょ、冗談じゃない。何であたしがそんなのはかないといけないんだよ。
あたしはあんたと違って、普通のルーズ持ってるんだからね。だいたい何でそんなのわざわざ
買うんだよ。普通の買えばいいじゃん?」

「いやあ、普通のルーズが欲しかったんだけどね、ちょっと事情でさぁ、いつの間にか
こうなっちゃってたんだよ。でさぁ、ついでにちょっとおもしろいことを思いついたんだよね。
ちょっと聞いてよ」あたしはにやにやしながらミリに耳打ちした。聞くうちにミリも
にやにやし出した。
二人で馬鹿な事するときが一番気が合うんだよね。親友、って感じ?

あたし達は放課後、あたしの家に向かった。あたしんちでいろいろしゃべりながら、
あたしが今日はいてるみたいなルーズソックスを、残りの例のソックスを全部使って、
8足ほどしかできなかったけど作った。あたしがミシンを動かしている間、ミリはそれにつける
タグを作った。
絵の具でぐちゃぐちゃ画用紙に塗りたくって、乾いたら画用紙を8等分に切って、1足ずつ
まとめたルーズに、糸で縫い閉じていった。そのタグには怪しげな東京らしき電話番号を
ちょっとタイプ文字風に書いて、適当な英単語を並べておいた。

それからそれがすむとミリの兄さんの店に行った。ミリの兄さんは駅前ビルの中に
雑貨屋兼ブティックを開いている。この辺ではただ一軒のおしゃれな(?)女子高生御用達の
店で、あたしはよくミリと冷やかしに行ってることが多いんだけど、今日は目的があった。
店にはいると、ミリはお兄さんに声を掛けた。

「兄貴、ちょっと相談があるんだけど?」

「ミリの相談?なんかあやしげだねぇ。おまけにのりこちゃん(あたしの名前…母のネーミング、
参るよね)までいるとはね」


あたしたちは相談を持ちかけたが、意外にもミリのお兄さんは乗り気になってくれた。
3人で話も弾んで結構遅くまで話し合った。家に帰るのが超遅くて、母に目茶怒られてしまった。
でもあたしは計画がうまく行くかもしれないので、気にしなかったけど。明日も楽しみ!!



「それでやったそのいたずらとは・・・。」


うちの高校の1年にはやたらと派手な3人組がいる。ごく一般的な女子高校生のイメージ
そのままの、全身髪から肌から黄土色みたいなきちゃない色の(それに制服を大改造して
着ている)けったいなトリオだ。
見事に東京カブレのけばけばしい人達で、「以前は可愛らしかったのにねぇ」なんて近所の
おばさん達に陰口をたたかれていること請け合い、みたいな。

彼女らは「東京、渋谷、原宿、カリスマ」、その辺の言葉に超弱いらしい。
猫にマタタビ、3バカトリオに「カリスマ」。これが真理ってもんだよね、ね?倫理の先生。
などとバカを言ってる場合ではない。

あたしはミリと共謀して2,3日堂々と胸を張って、例の自家製ルーズソックスをはいていった。
そのトリオの前ではとりわけ自慢げに、得意げな顔をしてちょっとケータイ(もちろんにせもの、
でもそんなのちょっと離れてたらわかんないじゃん?)を取り出して「カリスマ・・・原宿・・・」
などと、時々聞こえるようにしゃべるのである。
そんな馬鹿な事がほんとに真に受けるはずがないと、諸氏は思われるであろうが(この辺
現代国語の影響アリ)、受けたのである。信じられないよねえ?!

ある日あたしはそのうちの一人に呼び止められた。後の二人は少し後方にぼおおっと
突っ立ている。そうやってると、黄土色のかかしみたいだよ。

「あのぉ、先輩」

あたしは一瞬「ちょっとぉ、先輩止めてくださいよぉ。そのあほなルーズはいてくるのぉ。
そんなかっこわるいのぉ、はいてるのぉ、先輩ぐらいですよぉ?」なんてめちゃバカにしたように
言われるんじゃないかと思ってたら違ってた。良かった。

「そのルーズ、すっごくイケテルと思うんですけどぉ。どこでゲットしたんですかぁ?
先輩普段全然おしゃれしないのにぃ、急にどうしたんですかぁ? カレシでもできたんですかぁ?」

よけいなお世話なんだよね、全く。口を慎めっちゅうの。それであたしは言った。

「ちょっと教えられないなぁ。君たちにはね。ま、君たち得意の東京にでも行ったときに、
探してくれば? あたしだって、こういうの見つけるの、すっごく苦労したんだから」

とバックれてやった。

「ええ? そう言わずに教えてくださいよぉ。ミリ先輩のお兄さんとこじゃないんですかぁ?
良いじゃないですかぁ。教えてくださいよぉ」

全くだらだらしたしゃべり方をするやっちゃなぁ。ええかげんにせえよ。・・・あたしは昨日見た
さんまのテレビの影響をかなり受けてるかもしれない。


「そんなに人の物まねしておもしろい?まあ、あんた達にはヒントぐらいあげても良いかもね。
…でもやっぱねぇ。おしゃれってのは苦労して、自分に似合うアイテムを探して、
自分なりに着こなすものだから、ね。パリジェンヌみたいにね。だからね、またね。」

あたしはそのあほなトリオをかかし状態のまま置いてけぼりにして立ち去りながら、
ちょっと長嶋監督みたいだなぁ、なんて思った。もっともらしいことを言ってるけど、
意味をなしてない。

夕方あたしはミリとミリのお兄さんの店に再び行った。ミリのお兄さんはあたし達を見ると、
目を輝かせながら言った。

「来たよ、来たんだぜ。全部買ってった!いやあ、おもしろかったぜ!…すましてやってきて、
いろいろ店内を見回って、見つけたら三人でこそこそ相談しながらしばらく離れて違う物見たり、
また戻ってきたりして、そのうち決心して、みんなで2足ずつ、あるのみんな買っていった!」

あたし達は爆笑した。

ネームタグには「SIBUYA KARISUMA SOCKS」と書いていたのである。
そんなの真に受ける人間がいるなんて信じられない! あたし達は涙を流して笑った。

後から考えると、別にけばけばしいだけで、何にも悪いこともしてない人間相手に、
ちょっと目立つから気にくわないと言うだけで、そう言う意地悪をわざわざお金を掛けて
するのは、そのトリオよりもあたし達の方がよっぽどバカだ、というのはよくわかるのだが、
そのときはすっごく面白かったのである。

次の日、あたし達は申し合わせたように、がっこに紺色のアーガイルの上品な感じのソックスを
はいていった。



おわり♪

 






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