表題: 新世紀へようこそ 095 by 池澤夏樹
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日付: Thu, 20 Feb 2003 19:10:00 +0900 (JST)


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■『イラクの小さな橋を渡って』 文・池澤夏樹、写真・本橋成一

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 新世紀へようこそ 095


 日本の停滞、日本の迷い 2


 日本の停滞、日本の迷い、について再び考えます。

 イラク攻撃に関して、今の日本は分裂しています。国
民の大半は戦争に反対。しかし政府はブッシュ政権によ
るイラク攻撃を支持する姿勢を変えません。

 更に川口外相は、アメリカ支持をためらっているメキ
シコなどの安保理非常任理事国を説得すると言っていま
す。これは単にアメリカ支持を表明することを超えるも
の、大量殺人への荷担を教唆煽動する行為です。

 『イラクの小さな橋を渡って』の視点に立てばそうい
うことになります。

 これまでは武力行使を支持するか否かについて国内で
は「まだ言えない、言わないのが国益」と後出しジャン
ケン主義でいたのに、他の国に賛成しなさいと言ってま
わるのは矛盾でしょう。

 小泉政権はもちろん武力行使に賛成、大賛成と言いた
い。しかし国民の8割は戦争に反対。その国民を説得す
る論理はない。だから国内ではまだ決めないと言いなが
ら外ではあからさまに支持を表明する。

 大きなメディアも分裂しています。新聞は正面にはブ
ッシュ=小泉政権寄りの官製報道を掲げながら、コラム
や署名記事では反戦の思いを語っています。

 それに対して、ヨーロッパ諸国は政府もメディアもそ
れぞれの戦略に立った上で、はっきりと意思表示をして
います。

 ドイツのフィッシャー外相は「ドイツの国民は圧倒的
に戦争に反対である。戦争回避の道が残されている以上、
私は国民を戦争に向けて説得することはできない」と言
いました。これが民主主義というものでしょう。

 フランスのドビルパン外相は14日の安保理で「戦争
と占領と蛮行を体験した古い国」の代表として「我々の
責任と名誉にかけて、平和的な武装解除を優先すべきだ」
と述べました。会場にいた各国の外交官が(通常は禁止
されているにもかかわらず)一斉に拍手したそうです。

 それに対して、日本政府のふるまいはアメリカ追従と
いうに尽きます。

 政府はアメリカの対イラク政策をそのまま追認するだ
けでなく、米軍の指揮下に入って戦争を遂行することを
前提に軍艦を派遣しました。

 去年の12月に海上自衛隊のイージス艦「きりしま」
がほとんど何の議論もないうちにインド洋に向かいまし
た。あれが分かれ目だったという気がします。

 イージス艦は、名前が奇妙だからわかりにくいけれど、
輸送ではなく戦闘に従事する艦です。事実上政府はアフ
ガニスタンの時からまた一歩大きく踏み出したわけです。

 日本のこの方針転換は決して国ぜんたいの熟慮の結果
ではありません。政府からは何の説明もなく、従って議
論も一切なかった。メディアはほとんど報道しなかった。

 政府首脳には自分たちがどういう道を選んだか、わか
っていないのかもしれない。

 そう考えないと、今の首相や外相の発する言葉の矛盾
は説明できません。

 具体的に説明しましょう。

 第二次大戦後の世界で、平和への貢献に関して日本が
誇れることはいくつかありました。
まず、日本は少なくとも武器の輸出という商売はしなか
った。いくつかの違反事例はあるようですが、原則とし
てこれは守られてきました。アメリカはじめ先進国のほ
とんどが武器を売って稼いでいる時に、それだけはしな
かった。

 また、アメリカの核の傘の下に入っていたとはいえ、
自分では核兵器は持たなかった。その技術も材料も手元
にあったけれど、しかし製造はしなかった。

 もう一つ、ある意味では最も重要なのは、日本の軍人
が任務として人を殺したことが一度もなかったというこ
とです。

 実際問題として日本は「国際紛争を解決する手段とし
ての武力の行使」はしないできた。

 これらは明かに日本が主体的に決めて守ってきた方針
でした。

 しかし、アフガニスタンを攻撃するアメリカ軍に給油
するために派遣された自衛艦は、結果においてアフガニ
スタンの人々を殺すのに手を貸しました。

 あの作戦行動のどこが「自衛」なのか。仮に憲法解釈
によって自衛のための戦闘を認めるとしても、武力によ
るタリバン排除がなぜ自衛になるのか。

 今回のアメリカ主導のイラク侵攻もまた日本の自衛と
はまったく無関係な行動です。いわゆる集団的自衛権の
範囲をも大きく踏み越えるものです。今、イラクはアメ
リカを攻撃しようとしているわけではないし、かつて攻
撃したこともない。日本にとっても、いかなる意味でも
脅威ではないばかりか、むしろ敵を増やすことになる。

 ヨーロッパの国々はしばらく前から世界のバランスを
取ろうとしてきました。冷戦のあとでアメリカ一国が強
者になるのは好ましくない。だからかつてあれほど仲が
悪かったフランスとドイツが手を握り、この二か国を核
としてEUを構築した。ユーロという新しい通貨を立て
てドルに対抗しようとした。

 この試みは成功しました。それ以上に、この試みが必
要な措置であったことが今回のような横暴なアメリカの
出現で証明された。いらだつアメリカのふるまいが却っ
てヨーロッパの結束を促すことになる。

 このような先を読んだ世界観と主体性を日本は持てま
せんでした。だから川口外相のような世にも軽い、ぺら
ぺらな発言が出てくる。

 ぼくが日本の停滞、日本の迷いと言うのはこのような
ことです。

 先日、アメリカの軍事関係者が、きたるべきイラク攻
撃の展開を解説した時に、「ヒロシマ効果」という言葉
を使いました。

 開戦の初日に300発から400発のミサイルをイラ
クに撃ち込む。翌日も同じ数のミサイルを投入する。こ
の集中的な大量破壊によってイラク側の戦意喪失を図る。

 これを「ヒロシマ効果」と呼んだのです。

 日本としてこれは聞き流せることではないはずです。
アメリカの軍人は今もヒロシマを成功した戦略と見なし
ている。10万人の死者のことも、あとあとまで残った
放射能障害のことも、まるで念頭にない。

 日本にすれば、ここで抗議しなくて何のための50年
に亘る平和主義と反核だったのか。非核三原則は何だっ
たのか。

 もしもヨーロッパの例に倣うとすれば、日本にとって
大事なのは遠いアメリカとの関係ではなく、近い中国や
朝鮮半島の二国との仲です。

 この1年、日本は逆のコースをたどりました。近隣諸
国を敵視する姿勢ばかりを前に出した。

 日本人のすべてがこの方針に賛成しているわけではな
い。人々は迷い、議論は乱れていますが、それ自体は悪
いことではないでしょう。今はむしろ議論をまとめよう
とする動きに警戒した方がいいかもしれません。

 次回は、また少し後になるかもしれませんが、恐怖に
よる誘導という政治原理のことを考えてみたいと思いま
す。

        (池澤夏樹 2003−02−20)


 追記 この週末、沖縄で二つの平和集会が開かれます。
詳細は文末に記します。
 世界的に反戦運動が盛り上がっている中、沖縄の人々
もがんばっています。お近くの方、また旅行で沖縄に来
られている方、ご参加ください。ぼくも顔を出すつもり
です。

 沖縄と言えば、昨日、名護市議会がイラク攻撃に反対
する決議を全会一致で可決しました。県内の自治体とし
てははじめてのことで、他へも波及するものとみられま
す。
 名護が決議に踏み切った裏には、キャンプ・シュワブ
の重機関銃射撃訓練を再開するというアメリカ海兵隊の
発表の影響があったかもしれません。去年の7月に事故
を起こして以来ずっとやめていたのに、原因究明もない
まままたはじめるというので、名護市は猛烈に反発して
います。基地の島ならでの切実な決議です。
 
■2月22日(土) 14:00〜16:30
『イラクのこどもたちは今』(バグダット派遣団報告会)
場所:那覇市民会館
     −イラク写真パネル展
     −バグダット派遣団からの報告
     −トーク、他

■2月23日(日) 13:00〜17:00
『イラクに平和を!』コンサート
場所:国際通り・旧国際ショピングセンター跡地
 飛び入り歓迎!

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