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アメリカが永遠に失ったもの
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マイケル・C・ルパート

2003年3月30日 アムステルダムにて



ヨーロッパで最も異文化が共存するこの街で、何かが変わった。そしてその変化
とは決して無視できないものである。道端のとあるカフェに入り、多種の言語が
飛び交う中で、一杯のコーヒーとクロワッサンを注文した私の米語に、店内の人
々が微かだが明らかに反応を示した。私の周りは静まり、路上の人は“ブッシュ
派のアメリカ人かどうか”私の言動に聞き耳をたてる。

ここはナチ占領下の時代にアンネ・フランクの隠れ家があった街。ナチ占領下の
ヨーロッパで唯一ナチに対する非暴力抵抗が行われた街。世界で一番多くレンブ
ラントやゴッホの作品が眠る街。世界で唯一大麻が合法的に売られる街。そして
人を傷つける事以外のすべての事を寛大に受け入れる街。

私の読者のドイツ人が、講演会場に来てくれた。私たちはイラクでの戦争につい
て話し合った。そして私はある事実に気がついた。ここではアメリカ人は“現代
のナチス党員”であり、“新たな占領者”とみなされはじめているのだ。

アムステルダムの老舗ホテルで見たニュースも、アメリカのそれとは大きく異な
る内容だった。アメリカ以外の国の放送局からの報道では、この戦争は違ったも
のに見える。

今回出席した会議で、私は著名なオランダ人ジャーナリスト、オルトマン氏の話
を夢中になって聞いた。氏はナチ占領時代にナチ軍補給部隊を爆破した国民的英
雄である。氏は断言する。「ブッシュはバカだ。ロシア、ドイツ、フランス、中国に
ハメられたんだ」、と。

オルトマン氏と私は次の懸念を共有する。ロシア、フランス、ドイツ、そして中
国が手を結んで、中東でアメリカが無惨にも負けてしまうように仕向けていたと
したら? その4国がアメリカを欺き、米軍の軍事力に関して偽りの安心感を抱
かせているとしたら? 18か月以上にも渡ってブッシュを追い込み、新保守派の
うぬぼれを植え付け、結果この軍事的措置につながっているのだとしたら?

ロシアのプーチン大統領は、アメリカが早期に勝利すれば、原油産出コストの高
い自国が今後10〜15年間競争力を失うことになるのはわかっていただろう。フラ
ンス、ドイツ、中国もそれを理解していただろう。アメリカがイラクやサウジア
ラビアを支配する事になれば、同時に世界経済をも支配することになる。非同盟
国すべてが、ナチスドイツを彷彿とさせるアメリカの一方的な軍事措置に、あら
ゆる手段で抵抗を試みている。

開戦後12日目にして、アメリカ以外のニュース番組や新聞で、ベトナム戦争の時の
映像をよく目にするようになった。苦境のベトナム。破壊の地、ベトナム。人類
の悲劇の地、ベトナム。アメリカの敗北の地、ベトナム。ベトナム、ベトナム、
ベトナム……

アメリカにとってこの戦争は、イラクの原油生産量を1日300万バレル以上に引き
上げられるまで勝利したことにならない。それがさらに500〜800万バレルに達し
ないと、アメリカ経済は回復しない。プーチン率いるロシアが備蓄でヨーロッパ
の需要に応える一方で、アメリカは文字通り石油を搾り出さなければならない状
況にある。

だが、アメリカはこの戦争に勝利できない。アラブ諸国は反抗を始めている。ア
メリカの新保守派は、まるで映画「博士の異常な愛情」のように爆弾に執着して
いる。まともな考えをもった多くの人たちから、アメリカはすでにこの戦争に敗
北したと判断されているのに。アメリカは、敗北とともに経済力、ドルの価値、
世界における主導権を全て失うのだ。

ブッシュの新保守主義の犠牲としてアメリカの土台が葬りさられ、ここ150年あ
まりで最大の世界再編がはじまろうという今、私は疑問を抱く。「これがもっと
大きな罠の一端だとしたら、どうなるのだろう?」、と。

ヨーロッパを訪れるのはずっと私の夢だった。そこでは当然、アメリカ人といえ
ば解放者であり、私が生まれたときから信じてきた自由や民主主義の担い手と見
てもらえるはずだった。しかし現実は違っていた。今ヨーロッパで人々が私を見
る目は、60年前のナチス党員に対するそれと同じなのだ。

第2次世界大戦後にアメリカがヨーロッパ諸国から勝ち得た信頼は、永遠に失わ
れてしまった。

(抄訳:中西 仁美/TUP)

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